ねこと書道の始まり [書道] #5
書道を始めて2カ月、「書道楽しい」絶頂期に来たのが、フレディ(ねこ)だ。夢中になって燃え盛っていた火に、ざばんと水を浴びせられた。
書いていると必ず邪魔をする。下敷きの上に紙を置くと、ズバン!と手で押さえる。文鎮の向こうから虚ろな目でこちらを見ていたかと思ったら、文鎮にもたれて(文鎮を押しながら)寝てしまう。清書や手本をいっぱいに広げた上や、紙の間に「落ちて」いる。
これはまだおとなしい方で、もっとひどい時には、ある程度練習を重ねて「さぁ清書しよう」という絶妙なタイミングでやって来て、清書や手本の紙の上にどかっと座って動かない。濡れた足で紙の上を歩き、字が滲む。さらには、墨を入れた小皿に前足を突っ込み、それをパッ、パッ、と振って、大惨事が発生した。
そのほかに、筆をしつこく噛んでくる。これは、「(筆は自分と)同じ『毛』なんで、嫉妬してるんですよ」(kueさん)という説もあった。
以前は、一人でいる時に集中しないと書けず、通いのお手伝いのミニさんが家で仕事をしている間は、書道はしなかった。それがフレディが来てからは、ミニさんが家に来た時にフレディを頼み、急いで清書する始末。
フレディかわいさと、半ばヤケの両方で、ツイッターで「#ねこと書道」のハッシュタグを付けて写真をアップするようになった。
見た人からは、「その軟らかそうなお腹に両手をかけ、クレーンのように持ち上げて下ろしてはいかがでしょうか? いつも見ていてもどかしいんですが」というコメントがあった。「そうやって下ろしても、次の瞬間、また上がるんです。また下ろす、また上がる。それを繰り返しているうちに、人間の方が負けます」と返事をした。
「書道の間、部屋に閉じこもる」というのもやってみた。しかし、戸の外で悲痛な声で鳴き続ける。これも人間の方が根負け。
次に来た甚五郎は、紙を破くのが好き。ふと見たら、出しっぱなしにしてあった紙を楽しそうに「びりっ、びりっ」と食いちぎっていて、あわてて紙を避難させた。あと、フェルトが大好きで、下敷き用の大きなフェルトは甚五郎の寝場所と化している。
目黒先生は「ねこちゃん元気?」と聞いてくれ、「ねこと遊びながら書いたとは思えない」と優しく言ってくださるが、うちのねこの邪魔は度を超しているため、「ねこと書道」の詳細については先生に内緒だ。
「こうなったらもう、『ねこと書道』という新ジャンルを立ち上げるしかない」とも言われている。ねこがいなければ、ひょっとして、すごい書の大家になれたかもしれない……?
「ねこと書道」の極意
一、ねこに邪魔されても、負けずに、しつこく書き続ける。
一、ねこがいなくなった隙に清書をする。
一、最終的にはあきらめる。
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