絵のような字、篆書と象形文字 [書道] #14

絵のような字、篆書と象形文字 [書道] #14

 「行って戻る」筆の使い方は隷書(れいしょ)と同じだが、篆書(てんしょ)は楽しい。

印鑑文字の篆書
印鑑に使われる篆書体。線で作られた模様のような面白さと美しさ

 「古代文字である甲骨文字、象形文字が、中国の文字の黎明期に、初めて文字としての体裁が整えられた。象形文字に最も近いのが篆書」

 「隷書が平たく安定感があるのに対し、篆書は縦長。華やかで趣がある。動きがあって、面白い字」 

 「気品、柔らかさ、優しさがある。印鑑にするのに、情緒があって良い」

(目黒先生)

 何かを表している「絵」のような所が面白い。「字って、元々はこうだったのかなぁ」と想像しながら書くのは楽しい。自由に書ける楽しさがある。そして、隷書よりもバランスが取りやすい。隷書だと、最初は字にもならないのだ。

「對酒當歌」
篆書の「對酒當歌」

 いただいた課題は「對酒當歌」、「酒に対し、まさに歌うべし」。「酒」の右側は、酒を入れる入れ物だろうか。右下の三角は何だろう? どの字も、何を表しているかはよくわからないのだが、眺めているとなんだか楽しくなってくる。

 「歪んでも構わないし、その方が面白い。いびつさが面白い」とのことだった。そう聞くと、さらに気楽に書ける。

 しかし、「甲骨文字」までいってしまうと、もう自分が何を書いているのか、さっぱりわからない。絵は大の苦手な上に、デザインセンスもない。「もう、何をやらされるんだ。こんなの、字じゃないじゃないか」と内心思いながら、仕方なく、見よう見まねで書く。

 ところが、やってみると、こんな子供の絵のようなものでも、手本通りに書くのは難しい。いくら同じに書こうとしても、同じにならない。鹿の顔の大きさ、目の位置、その左の、旗の立っている棒、字のかすれ、全体のバランスなど、全然、違う。「あれ? ここが違う……もう一枚。まだ違うなぁ。もう一枚」……と、次々に紙を費やして、書き続けることになる。

象形文字、「鹿鳴」
象形文字、「鹿鳴」
象形文字の「鹿」と、フレディの尻尾が一体化した奇跡の瞬間
象形文字の「鹿」と、フレディの尻尾が一体化した奇跡の瞬間

 こうして出来た清書を目黒先生に提出すると「堂々と、面白く、書けました」と褒められた。「おおらかな字。かなは、おおらかすぎるんだな」。

 私の友達に言わせると、私は「今は使われていない字がうまい」とのこと。かなは、今も使われているから、ダメだそうで……。