[バッグ] #1 ペットボトル付きで「ノー・プラスチック」

[バッグ] #1 ペットボトル付きで「ノー・プラスチック」

 「ジャカルタ・グッド・ガイド」による中華街グロドックのウォーキング・ツアーで、参加者の外国人男性が肩にかけていた布製のトートバッグに目を奪われた。ぱっと見た時には、バッグの外側に、ビニール袋に入れたおやつをくっつけているんだ、と思った。「すぐ食べられるように、おやつを持ち歩いているのか、便利だな」と。

 しかし、よく見ると「あれ? ペットボトル? ペットボトルの中に、おやつを入れる??」と疑念が湧いた。生成りのトートバッグには、英語の文字が新聞記事風にびっしり書いてあり、そこには「プラスチック」だの「ゴミ」だのと書かれている……? そこでようやく、「ノー・プラスチック」のメッセージ・バッグか、と気が付いた。

 これは一体どうなっているの?と見ると、縦割りにしたペットボトル半分が、布の上に縫い付けてある。ペットボトルの中には、インドミーやらテ・タリックやら、インドネシアでよく見る食品パッケージのプラスチックゴミが詰め込んである。光るペットボトルとカラフルなゴミが、妙にかわいい。ペットボトルの部分だけが立体になって出っ張っている点も、バッグとして非常にユニークで面白い。

ペットボトルが布に縫い付けてある
ペットボトルが布に縫い付けてある

 「どこで買ったの?」と、そのバッグの持ち主に聞こうとして、バッグの端にあるブランド名が目に留まった。「BIASA」か。イタリア人デザイナーがバリで立ち上げたブランドだ。南ジャカルタ・クマンにもショップがある。その特徴のあるロゴに見覚えがあった。

 ものすごく気になってしまい、帰宅してから、ウェブサイトで調べてみた。このバッグ、「TRASHED」(捨てられた)の商品説明には、こうある。

 BIASAは、その萌芽の時から、ビニール袋使用反対のキャンペーンを続けてきました。その考えを表現したカスタムメードのバッグを作りました。

 われわれ消費者は、自らの選択を意識しないといけません。ゴミは誰か他の人の問題だ、と思っているのなら、考え直す必要があります。このバッグは、そのことを思い起こさせるものです。全てのゴミの一片一片が、正しく処理すれば、リサイクル可能なのです。

 Reduce. Reuse. Recycle. (減らそう、再利用しよう、再生しよう)

(注:ちょっと意訳。原文は https://biasagroup.com/collections/bags/products/trashed-bag

 2013年、インドネシアのゴミ問題に警鐘を鳴らすプロジェクトが行われ、「TRASHED」と題するドキュメンタリー映画がジャカルタで上映された。BIASAはこのプロジェクトに賛同し、「TRASHED」バッグの制作協力をした、という。

バッグの裏はインドネシア語
バッグの裏はインドネシア語のメッセージ。文面は、表の英語と同じ

 私は2021年5月に「Pulau Plastik」(プラスチックの島)というインドネシアのドキュメンタリー映画を見て、強く心を動かされた。クライマックスのシーンでは、涙が出た。

 バリ島のミュージシャンが主人公で、プラスチック・ゴミをトラックに積み込み、バリ島からジャワ島へと渡り、ジャワ島を横断して首都ジャカルタを目指す。その旅の間に、研究所に立ち寄り、ゴミ問題の活動家らと交流しながら、ゴミ問題の現実を学んでいく。終着点のジャカルタで、運んで来たプラスチック・ゴミを使って、皆で巨大なオブジェを作り、大通りをパレードする。

 主人公のキャラクターがとてもいい。「上から押し付ける」のではなく、等身大の飾らない姿で、映画を見ている人と同じ目線で、プラスチック問題にぐいぐい入っていく。

 プラスチック・ゴミを外国から輸入している現場を見る。インドネシアは諸外国のゴミ捨て場なのか? そのゴミは、乾燥させてから、豆腐屋の燃料になる。豆腐屋から、もくもく上がる煙。川にたまったプラゴミ。魚や人体への影響はどうか。旅の途中で出会った100人に検便をお願いし、サンプルを集める。「全員の便からマイクロプラスチックが検出された」という結果が、映画の最後に字幕で流れる。

 深刻な現状を訴えながらも、その現実に打ちのめされてしまうことはない。明るい。旅し、歌う。車の中で歌い、屋台でも大合唱。あちこちでゴミを拾ってトラックに積み、ゴミ問題を訴え続ける。「できることからやろう」という、その行動力が素晴らしい。明るさ、ポジティブさ、インドネシア人の良さが詰まった映画だ。これは日本人、世界中の人に見てほしい(Netflixにあります)。

 映画を見て以来、プラスチック・ゴミ問題に関心を持つようになった。しかし、ビニール袋などは、どうしても使わざるを得ない。罪悪感を覚える……。このバッグは、バリ島発のブランドということもあり、映画「プラスチックの島」を思い出し、必然的に、映画を見た感動や、そのメッセージを思い出す。

 値段は35万ルピア、バリからジャカルタへの送料は4万ルピア。それほど高いわけではないが、買うべきか。迷ってカートに入れたままウェブサイトを閉じたら、翌日、「商品がカートに入ったままです。お買い物を完了させましょう」というメールが来た。よし、買おう。

 支払いを済ませ、わくわくしてバッグの到着を待った。JNEの追跡を執拗にやって、デンパサールから発送されてジャカルタの家まで近付いて来るのを確認し、ついに「配達完了」の知らせ。届いた! すぐ取りに行った。

 箱を開けてバッグを見た時、「うーん、やっちゃったか……」と思った。「これは、あの外国人男性が持っていたから、おしゃれに使いこなせていたのでは?」。バッグには、片面英語、片面インドネシア語で、びっしりとメッセージ。こんこんと、いかにわれわれが大量のゴミを出して地球に負担をかけているかを説く。めちゃくちゃメッセージ性が強い。さらに、立体のペットボトル付き。これはかなり、持って歩くのが恥ずかしい。「ゴミを減らそう」というバッグを買って、要らない物(ゴミ)を増やしてしまったのではないか? いや、これは使うのみ。

バッグの表は英語
バッグの表は英語で書かれたメッセージとペットボトル
出っ張りが気になるホタル(ねこ)
出っ張りが気になるホタル(ねこ)

BIASA
「TRASHED」

35万ルピア

良い所
・コンセプトとデザイン性
・ユニークさ

不満な所
・口のファスナー、内・外ポケットがない
・重くて、かさばる(ペットボトルの分)

https://biasagroup.com